ストーリーや設定について


 魔人竜生誕はヒーロー物である。よってその根幹は勧善懲悪となる。使い古されたパターン
とはいえ、いざやってみるとなかなか作るのが難しい。

 まず悪役。
 基本はライダー怪人とデビルマンのデーモン族を折半した物。モチーフは昆虫で。
虫は生物なのにどこか機械的な所がモンスターチックで素晴らしい。
 なのにラスボスはクトゥルフ系だったり。強さ表現をどうするかはバトル物を作る時に悩む要
素の一つであるが、自分はラスボスの強大さを「認識から根本的に違う。向こ
うは人間の事なんて気にもしちゃいねぇ」という態度をとらせる事で出そう
と思ったのだ。奴にとって人間は水溜りの中のミジンコ以下であり、そもそも存在に気づきさえ
しないのである。奴が世界そのものを食っているせいで、結果的に人間がピンチになってい
るだけなのだ。
 とはいえ、この表現が成功しているのかどうかは読んだ人に判断してもらうしかない。

 最初、主神は緑しかいなかった。緑はお人よしだけが取り得の一山いくらな存在であ
る。明はただの人間であり犠牲者A。蘇生させた緑さえ何の戦果も期待していな
いザコ兵士からスタートする。
 初稿のエンディングは4つしかなかった。相打ちとライバル和解(これが隠しED)、辿り着く事
が不可能なダミー。そして真エンドとして用意した、ラブラブ奥義でラスボスを倒して結ばれめで
たしめでたしのハッピーエンドである。
 「ジーレギオン」は、誰も倒せない強大な邪神を人がいいだけのザコ
神さまと殴る蹴るしかできない鉄拳馬鹿が二人がかりのグー
パンチで叩きのめす話だったのだ。
 いやだって、世間を見渡せば、生まれつき何か(血筋や才能や運命)に選ばれた主人公が
優先的に特権みたいな能力や武器を与えられて何をしても無駄な凡人を尻目に大業を果たし
てめでたしめでたし、みたいな話が多いわけで。
 最近では、状況に流されるしか脳の無い主人公のもとに大量の女が転がり込んでくるパター
ンもあるな。場合によっては金とか地位までも。
 どちらも男の願望をストレートに表した結果だろうし、そう考えると好感が持てるが。

 あってもいいだろう。
 金無いモテ無い運も無い、援軍無しで理解者少数、都合の悪い事ばかり重点的に起こりが
ち。敵は人間の理屈なんて気にもしてくれない化け物どもばかり。そんな戦いの道程を、たった
一人の無力なパートナーとの日常で休憩しながら、力でもって強引に押し進むような男の話
が。

 ロードス島戦記TRPGの集中力ロールやスーパーロボット大戦の精神コマンドのような「ヒー
ロー特権」が明には無い。発動させればあらゆる敵に問答無用で通用し、何も考えず余
裕で楽勝できるような都合の良い万能技も無い(隠し技は例外だがな)。
 そんなものに依存するようなキャラではないという事だ。
 戦闘になれば傷つきながら敵の弱点を探り、力づくで捻じ伏せるしか無い。これにはストーリ
ーの表現を兼ねている部分もある(一つのシステムは一つの要素でのみ作るのではないの
だ)。
 奇跡は起きない、そんなものには頼らない。それでも起きるとすれば、それは何もか
もやり尽くす本当に最後、たった一度だけであり、その奇跡は本人が積み重ねてきた物がある
からこそ起きる本人自身の力なのだ。
 ……という話をやりたかったのだが、これまたどの程度成功しているやら。

 とはいえ、全体を見れば自分的にはまぁ満足のいく出来にはなっている。細かい点で不満や
反省点が数え切れないのは間違いないが、やれるだけの事はやってみた。
 この作品が一人でも多くの人間を楽しませる事を願う。

 なお、自分的には次回作も書いてみたい。酒井さんも「魔人竜ぐらいの完成度なら構わない」
と言ってくださっている。
 というわけで実は既に案までは作ってある。あとは文章にするだけだ、という段階まで
は。舞台もシステムもストーリーも。ただ、文章にするのはネット上などで魔人竜への意見をあ
ちこちから集めてから……と考えていた。実際、今時ゲームブックのサイトを作っているような
人の意見にはなかなか参考になる物が多い。そこかしこで指摘された点は覚えておくつもり
だ。
 しかし今の段階では、相変わらず時代逆行な男主人公がいびつな化物をブチ殺し
たり殺されたりといった内容であり、商品として考えた場合誉められた物にはならないかもし
れない。もう少し趣味を抑え世間という物に迎合すべきか。
 となればやはり可愛いおにゃのこ路線しかないぉ。萌ぇ萌えだyoネ、やっぱりぃ。
 TRPGのルールブックやリプレイ単行本でさえファンシーなアニメ絵が描かれている今、その
路線から目を背けるわけにはいくまい。幸い、酒井さんはそっち方面にも理解の
ある人だ(詳しくは書かないが)。ならば今こそ駆け抜ける時!
 というわけで、今、子供の頃買ってもらった「両生・爬虫類」という図鑑を眺めている最
中である。何かが掴めたら次回作に反映するとしよう。
 次回作が出せるのかどうかまではわからんが。

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