機動戦士ガンダム 灼熱の追撃

 店頭デモで「ガンダムSEED・DESTINY」のDVDを少し見た事がある。最近のガンダムは
非常にカッコイイ。スリムでありながら逞しく、大きな翼がヒーローチックだ。ガンダムF91辺
りからこういうフォルムになったと記憶している。昔、80年代のZZガンダムなんかは無骨で洗
練されてなかったりしたものだが(それはそれで良い物ではある)
 今でこそヒーロースタイルの強調されているガンダムだが、初代「機動戦士ガンダム」は同時
期の他ロボット番組と差別化するため、SF色とミリタリー色を重視して作られていた。本
放送当時こそ揮わなかったものの、映画化や再放送などを続けるうちにその特色がヒットしだ
し、今に続く金字塔としての成果を残す事になるわけだが……。
 このゲームブックは初代ガンダムの世界を舞台に作られた作品である。ガンダムらしさを重
視したのだろうがミリタリー色の方ばかり強調されており、ストーリーもゲームバラ
ンスも過剰に過酷だ。
 時は宇宙世紀0079、舞台はアフリカ。主人公ジョンはジオン軍の2級整備兵。補給
基地で働くただの少年である。だがこの基地にあった機密データ入りのコンテナが裏切り
者の部隊に奪取され基地は破壊される。生き残った人間の中で唯一モビルスーツを扱える彼
は、連邦の手にコンテナが渡される前に取り返さねばならず、単身でモビルスーツを駆り炎天
下のアフリカで追撃戦をやる事となった。
 ここで主人公がニュータイプだのコーディネイターだのガンダムファイターだのならば新作ア
ニメのストーリーにできそうだが、彼は初期戦闘力値0(比喩ではなく絶対
値)の、本当にただの整備兵だったりする。
 無茶だろ。
 与えられるモビルスーツが最新型のカスタム機なら王道ストーリーになるのだが、格納庫に
行って見ればザクとかドムとかの量産型しかない。しかも予備の弾薬さえ無い。
 無茶だろ。
 自分を遥かに上回る即死級の敵がウヨウヨするアフリカの大地を、ある時は逃げまどい、あ
る時は弱りきった敵にハイエナのごとく襲い掛かり、またある時はゲリラのトラップで殺され、あ
る時は連邦の基地から強力なモビルスーツ(ジム等。このゲームではビーム兵器が使え
れば最強レベル)を盗み出し……ヒーローらしさとは無縁のサバイバルを潜り抜けねばなら
ないゲーム内容を端的に表現すれば「ホント戦場は地獄だぜー」
 アリンコのごとくこちらを蹴散らしてくれるゲームバランスに思わず反戦主義者になりそうなこ
の作品、どこかで見かけたら保護しておくのもいいだろう。実は最適ルートを見つけ出せばちゃ
んとクリアできる良作でもある。

プレイ記録はこちら。

【ジョン・クエスト】
 主人公。アフリカ第18補給基地の2級整備兵。スペースノイドだが学徒動員によって従軍、アフリカ基地に赴任した。
 初期戦闘力値ゼロ、文字通り最弱の主人公。自分より弱い奴がいない戦場に行かされる真性の苦労人。
【クランベリー】
 裏切り者の部隊「鉄のサソリ」隊長。ラスボス。
 愛機ゲルググキャノンを駆り、射撃戦・格闘戦ともに隙無くこなす百戦錬磨のベテラン。任務にとことん忠実なプロだが、必要以上の殺戮は犯さない。
 そんな彼が軍を裏切った動機とは……?
【エミリア】
 ジオン軍の偽装連絡員。とある町に潜伏。おっさんばかり出てくるこのゲームにおける数少ない女の子。
 主人公とみつめあっているかのようなイラストもあるが、愛を語らっているのではなく敵基地の情報をやりとりしているというのがこの作品らしい。どこまでも色気の無いゲームだ……だがそれがいい。
【ズゴック】
 最初の搭乗機候補の一機。
 ビクトリア湖の探索用として基地に置かれてあり、アフリカの大地を延々歩き続ける任務には決して適していない。事実、これを選ぶというのは死亡トラップに引っかかったに等しい。
 仕方は無い。外見が萌えキャラだからといって惑わされるような馬鹿は死ね、というのが真の戦場という物だ。


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