過去か未来かもわからぬ時代、光を司る「輝きの女王」が、宇宙からの侵略者・ヘルに封印
された。ヘルとエイリアン軍団が地球の覇者となって幾星霜――その本拠地たる城塞にて主 人公は目覚める。体を持たぬ、魂だけの存在として……。
こうして始まるこの作品、同名パソコンゲームのゲームブック移植作だ。主人公は己が倒し
た相手の体を乗っ取りながらゲームを進め、己が何者なのか、使命は何なのかを探す事にな る。
ヘルの暗黒要塞は双方向式の迷路になっており、数々のアイテムを手に入れ
ながら進まねばならない。だがアイテムさえ手に入れていけば通れない場所はないし、即 死トラップはほぼ存在しない。それでもクリアは難しい。残念ながら戦闘のバランスがあま りよくないのだ。主人公は倒した敵の体を乗っ取るわけだが、言い換えれば周囲の敵と の戦力はほぼ五分。勝率5割なら2回に1回は負けるわけで……。無論、主人公特権もあ る。経験値を稼げば、体の持つ戦闘力に上乗せできる戦力値が得られるのだ。ただ、当然な がら最初は経験値が0から始まる。よってこのゲーム、序盤はほとんど五分の敵と運頼 みで戦い、中盤以降からどんどん楽になるという「結果デフレ」が起きてしまっているの だ。
まぁそれに目を瞑ればかなり完成度が高い。特にダンジョンハックでありながら設定に則した
スト−リーを持っており、味方NPCを敵扱いして倒すとハッピーエンドが迎えられな くなる(それでも使命を果たして不完全なエンディングに辿り着く事はできる。つまりマルチ エンディングだ)。味方NPCには地面から這い出すゾンビもおり、見かけだけでは 判断し難くなっている。どうせ味方は外見の綺麗な奴ばかりだろう、という決めつけなど通用し ないのだ。まともな外見の奴は鎧を着た髭の爺さんや這いつくばって死にそうな戦士などであ り、ミニスカの美少女なんぞいるわけもない。
戦闘バランスは悪いが同時代の基準でいえばそれほど酷くもないのかもしれな
い。出来栄えで言えばおそらくゲームブックの中では高い方ではあるだろう。
なお、ファミコン版は当時できたばかりのディスクシステムに移植されており、相当に凄ま
じい出来栄えだったと聞く。読み込み箇所がやたらと多く、画面をスクロールさせてはロ ーディング・梯子を昇ってはローディング・天井近くでジャンプしたらローディングが起こって着 地する時にまたローディングだったらしい。なんだかプレステ版WIZ7(ステータス画面を開くた びにローディング)を思い出させる話ではある……。
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