エクセア

 創元推理文庫から出版されていた赤い背表紙のゲームブックシリーズ。そこから一般公募
にて選ばれた作品の一つがこの「エクセア」である。
 ストーリーを簡潔に記せば『突如として消え失せたエクセア国の王子が伝説の剣
を手に入れて魔王に立ち向かう』となる。だがこれだけではこの作品を知る人間は首を
縦に振るまい。この作品、当時の少年ジャンプ的な要素があちこちにゴロゴロ転がってい
むしろそれの方が目に付いて仕方が無いのだ。
 ゲーム開始直後は魔王の魔の字も出ていない。当初の目的は「ファンデム王国主
催・王座決定戦」に参加する事。大国ファンデムの王が息子を持たずに崩御しちまった
んで、亡き王の三人娘が婿選びのために迷路の中でのバトルロイヤルを開催。主人公はそれ
に名乗りをあげて野心溢れる戦士たちと生死をかけて戦うのだ。
 ゲェーッ……ファンデム国王位争奪編!? しかしライバルが美丈
夫な青年ばかりなのでどちらかと言うと銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ
と読め)の方か。
 見事王位を手に入れたら、突然現れる魔王軍との戦争が始まる。新章突入と同時に強
敵出現は当然の事であり理由はいらぬ。伝説のアイテムを手に入れてラスボスに挑む
が、途中で強制的に散ってゆく仲間たち! 即死フラグと即死判定を武器に待ち
受けるラスボスを伝説の剣に込めた愛のパワーで撃破! こうして平和は守られた。死ん
だ仲間もなぜか生き返っているぞ。いい奴になって生き返ったラスボ
も含め皆で肩を組んで明日へと向かう大団円だ!
 いつカイザーナックルとか黄金のマスクとか塾長とかが出てくるのかと内心ヒヤ
ヒヤワクワクしていたのは内緒にするような事じゃないんだろう。多分。
 でも必須アイテムを持ってる敵が、対処方はほぼ無いうえに命中率の高い即死攻撃を使っ
たりするのはちょっと困る。あとがきには「難易度はそう高く無いと思います」と書いてあるが、
きっと比較対象が「蘇る妖術使い」だったに違いない。

【ラストーレ・エクセルム】
 主人公。ある朝おきたら祖国が全部消えていたという異常経験の持ち主。ムチャクチャ強いライバル達が待ち受ける大会に挑むのは主人公の宿命だが、彼の主人公たる特技は伝説の剣を装備できる事。よってそれを手に入れるまでは本当にただの戦士だったりする。
【ユージス様】
 ラスボス。貴族の青年だったが、黒魔術の奥義を極めて魔王へ転職した。倒された後は良い奴になって蘇った筈だが、一万年後も魔界で魔王をやっていたりする。結構いい商売なのか、魔王。
 グレた動機は「初恋の女の子が死んじゃったから」。 
【パーシー君とコーラル君】
 主人公の義兄弟になる二人。白いのがパーシーで黒いのがコーラル。ラスボス戦を盛り上げるために死亡するという苛酷な役目を全力で果たす気の良い連中。
 何時の間にか生き返る事が得意技。
【キリエさん】
 サンクトス大公。男女問わず端正な顔の持ち主が多いこの作品において異彩を放っている個性派。多分種族は人間ではないのだろう。
 付け加えるなら悪者。エンディングを見たければ彼に会う必要有り。文句あるか? 有っても却下する。


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