フォボス内乱

 ゲームブックというジャンルで最も大きな勢力は「剣と魔法のファンタジー」である。始祖であ
る「火吹き山の魔法使い」からしてそうだったし、名作扱いされている作品もほとんどがそうだ。
石を投げれば旅の剣士に当り、「おい魔王様」と呼べば周囲が一勢に振り向きかね
ない。ただ、どんな場合にも例外や少数派というものは存在する。この「フォボス内乱」がそう
であるように。
 この作品、構成が少し変わっていて、二つの短編ゲームと一つの短編小説が収録
されている。全ての舞台は共通しており、時は遥か未来、場所は火星の衛星。人類が他星
に進出して居住地とし、アンドロイドやサイボーグが実用化され、なぜかエスパーが多数存在し
ている。
 SFですね。そう考える人も多かろう。
 否。答えは否。少なくとも収録ゲームの一つ「フォボス内乱」においては。
 主人公はアンドロイド。けれど見た目は10代半ばの女の子。ロボットですけどスカート
履いていますしイヤリングなんかしちゃってます。男の人にいけない誘惑すれば相手はイチコ
ロなんです。そんなシーンが本当にあります。
 だがそんな事はどうでもいい。
 その体内にビーム発射装置やバズーカを装備し、敵に回った何台もの装甲車
をミサイルで吹き飛ばし、場合によっては自爆装置で敵に神風特攻
を決める戦闘用ロボだというのが肝心なのだ。つまりジャンルはロボットバトル
物。日本が世界に誇る特有文化の一つがこの作品なのだ! ロボットプロレスバトルマンガを
生み出した事で日本人が世界最優秀民族の一つだと証明されたといっても過言ではあるま
い。そのジャンルでゲームブックが作られたのも当然だと言えよう。
 そのジャンルと主人公の外見が釣りあっていないように思うかもしれないが、美少女
バトルヒロインという存在が15年前からあったという証明にはなるだろう。とはいえその武器は
キラキラ光るホーリーパワーではなくエセ科学兵器ではあるが、これはこれで素晴らしい。
しろ個人的にはこちらの方が。
 かつて男の子だった者なら改造人間になりたかった事の一度や二度はある筈だ。鬱陶しい
事が起きたとき、メガスマッシャーで何もかも焼き尽くしてやりたいと思った事もあるだろう。
分なんかは今でもしょっちゅうである。年老いて死にそうになったら全身を超合金で固め
て惑星開発業者に身売りしようかなどと計画もしている。その時にはぜひ左手に体ぐらいある
大きなドリルを装備したいものだ。その際にもプリンター機能を搭載しゲームノベルは製造でき
るようにしておきたい。
 少々話が脱線したが、長くて複雑なゲームは息が切れる方にはお勧めの作品である事を記
しておく。

【ラートリー】
 少女型の戦闘用アンドロイド。なぜ少女型なのかは最後まで不明。製作者の博士は冒頭でいきなり死ぬので聞く事もできない。機能について何の説明もなされないのでいきなり体内の自爆装置を起動させてデッドエンドも有り得る、ちょっぴり危険な女の子。
【鋼鉄ジーグ】
 日本で一番カッコイイ巨大ロボの一つ。本人の承諾無しで親父に改造された司馬宙が頭部に変形、胴体他のパーツと合体して完成する。擬音で半分占められた主題歌は極めて洗脳性が高い。
 本作品には未登場。
【仮面ライダーゼクロス】
 全身の99%を改造されたパーフェクトサイボーグ。割合から考えて脳髄の一部しか肉体が残っていない筈。改造人間というよりは肉が一部使われたロボットではないかと思うのだがどうか。
 本作品には未登場。
【壊造時次郎】
 今やすっかり大御所となった感のある小畑健(当時のペンネームは土方茂)氏の初連載作の主人公。全身を自己改造した二千馬力にして70歳の農作業用サイボーグ。類を見ないほどキャッチーな主人公と言えよう。
 本作品には未登場。

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(C)原作:永井豪/画:松本めぐむ/双葉社
(C)原作:石ノ森章太郎/画:村枝賢一/講談社
(C)小畑健/集英社

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