ドラゴンの目

 シリーズ化すると同シリーズの中でも完成度に上下の幅が生じる。まぁ当然の話だ。2作
以上存在すれば、どれかが最低でどれかが最高になる。その差が個人嗜好で覆る程度の僅
差な事もあれば、言い訳の余地なく階級ができてしまう事もある。FFシリーズなんて
ゲームブックでは最高峰の知名度を誇るが名作揃いとはとても言えない。上の方は今見ても
感心が止まらないのに対し、下の方はこの程度でも作品化できるんだと自分を元気にし
てくれる程だ。
 創元推理文庫が輸入・翻訳し日本で出版したゴールデン・ドラゴン・ファンタジィ・ゲー
ムブックと銘打たれたシリーズが存在する。その中には明らかにテストプレイをしていな
作品もあるが、最高峰の作品はどうやってパクろうかと迷う程の出来栄えだ。
 そのぐらい、このドラゴンの目という作品はよく出来ている。
 とくかく設計に計算高さが見えるのだ。発想としては「クソゲーを面白くするにはどうす
ればいいのか」という方向になっている(結果論かもしれないがなっているんだから仕方な
い)。
 最初(項目1番!)にいきなり敵が出てくる。その戦闘力はまともに戦えば即死だ。必
須アイテムをもっている敵がいる。まともに戦えばほぼ負けて死ぬ。行くべき必須ポイン
トの出口に陣取る敵と戦おうものなら即死だ。ルートが二つに分岐するが、片方には主人
公より強い敵が待ちもう片方には主人公より強い敵が出現するという所もある。
 クリアできるかこんなもん。敵の数値を見直せや。
 それを数値はそのままに別の解決策をシステム化する事で突破しやがったよ
この作者。
 主人公はゲーム開始時、12種の魔法を使える。1種1回の使い捨てであり、ぶっちゃけ12
個の消耗アイテムを最初から持っているのと同じだ。これを適切な場所で使う事により
即死展開の半分はあっさり切り抜けられる。残りの半分は魔法を使う事で突破に
必要なアイテムを入手できる。どうしても剣で戦わねばならない相手は数匹のザコだけ
だ。
 無論、魔法を使う時にはどれを使うかの選択式なので不適切な物を選んで失敗する事もあ
る。その場は切り抜けられるが後にその魔法がどうしても必要でした、そこでは別の魔
法が正しかったんですというケースも発生する。
 しかしさして問題は無い。必要なカードのほとんどは始めに与えられているのだ。再
挑戦の折には手順を変えればいい事ぐらい脳に皺が1本以上あれば誰にでも理解できる。
こにあるのかもわからない必須アイテムを探すためだけにだらだら彷徨わねば
ならない鬱陶しさはこのゲームにはほとんど無い。
 そして魔法とアイテムの使用場所全てを見切った時、探索冒険物語とジグソーパズルがいか
に上手く噛み合うのか知る事ができるだろう。

 古代都市タリオスの廃墟にて、究極の魔力を秘めた宝石「ドラゴンの目」が発見された。高名な魔術師にして練達の剣士である主人公はアカデミー評議会の依頼を受け、考古学調査団と合流すべくタリオスに向かう。
 既に何の危険もなく、安全な只の発掘作業になる筈だった。しかし主人公がタリオスに足を踏み入れた時、事態は密かに激変していたのだ……。


※注意※
 タリオスの治安は極めて悪く、物をくれてやると自発的に言いながら3回に2回は相手をブチ殺して話をなかった事にする悪質なカマキリ顔のヤクザによる事件が多発しています。取引そのものを断りましょう。
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