伝説は終わらない

【アキラ】
 平和が戻ったのならこれ以上戦う必要などない。
 だが要不要だけで生きていけないのが人間のサガ。登る事のできる塔がまだ目の前にある。ならば登るとしよう、飽くまでな。
 なおタロットの「塔」のカードは正位置でも逆位置でも不幸・不吉を予言するという。無論、俺には何の関係もない。
 クリアしたデータをロードして再開。懐かしの上世界へ戻り、世界樹の北に位置する竜の女
王の城へ。メダルの落ちている窓にて、妖精が「真の勇者ならここから天界へ行ける」
と告げる。偽の勇者ならどこへ行くんだ……という疑問はさておき、光の中へ踏み込めば、
世界の裏ダンジョンへ突入だ。
 しかし天界への道にしては地底だとしか思えん通路が多いな……既存のダンジョンパ
ーツを使いまわしているのだから仕方ない事はわかるのだが。敵にも蟹とかトロルとか天界
を連想させる奴はあまり見かけない。まぁ敵は確実に強くなっている。キングヒドラがザ
コで出てくるほどだ。ステータスもそのままなのか特に強くもないのにHPだけやたらあ
るという面倒な相手になっている。
 延々と見覚えのある通路を抜け、ついに天空の城でゼニス王に会う。どうやら天空ワール
ドはロトシリーズの平行世界か何かのようだな。8も3と平行世界である事はほぼ確
実なので、現状では7だけハブられている事になる。次の9でどうなるのか。二つとも平行
世界になるのか、二つとも外に位置するのか、7だけ残されたままになるの
か。なかなか楽しみな所だ。
 城でアイテムの位置を謎々形式で教えてくれる奴がいたので、ちょいと引き返して集めてく
る。賢者の石(2個目)が手に入るので逃す手はない。その後に城から先へ進むのだが
……ようやく完全新規のダンジョンに突入。ここで敵もがらりと様変わりする。どいつもコイツも
難敵ばかり、まともに戦えばここまで来たパーティでも危うい奴ばかりだ。
 まぁ天の門番がメダパニで混乱する事とバラモスエビルがバシルーラで吹き飛
事を知っていれば詰まる事など無いとは思うが。
 ここで破壊の鉄球を入手したら一端引き返す時だ。アレフガルドへ戻り、ルビスの塔をえっち
らおっちらと登る。
 ザコは破壊の鉄球とグリンガムの鞭、炎のブーメラン等でほぼ無消費のまま一掃。はぐれメ
タルが出れば星降る腕輪装備のキャラがドラゴラム→他のキャラがピオリムの連
携で焼却を狙う。汚物とはぐれメタルは消毒するのがドラクエ3の基本。適当なレベ
ルまで上げてから裏ボスへ挑む事にする。

【メスロン】
 随分と長い事ご無沙汰していたね。まぁちょっとしたわけがあって。というのも、少々特殊なプレイに走ってしまった上、その前のデータに上書きしてしまったので、人様にお見せするかどうか迷っていんだ。僕は何も悪くないから苦情はアキラに頼むよ。
 あれはアキラのレベルがようやく58になってしばらくしてからの事だったかな。何度目になる
か数える気にもならない、はぐれメタル6匹全逃げの後だった。
アキラ「ええい面倒! 全ての呪文を覚えている今、レベルの値になど何の意味もなかろう!」
僕「予定じゃ君のレベルが60で裏ボスに挑む筈だったけどね。まぁ2レベルなんて誤差かもし
れないし、行くなら止めないよ」
アキラ「誰が強化までやめると言った! むしろやってやるわ!」
 こうしてルイーダに向かい、新たに盗賊・魔術師・僧侶・遊び人を登録した。余ってい
たアイテムを彼らに与え、アキラは自分とマーリン、新人のうち三人を酒場で待機さ
せる。そして僕とカズのレベル低めな賢者二人が新人の魔術師・僧侶・遊び人を順番に引率
し、レベル上げを引き受けた。装備が無茶苦茶強いからレベルもあっさり上がり、彼ら三人も
すぐにレベル20に到達。そして盗賊へ転職だ。僕とカズも酒場で待機し、盗賊四人のパー
ティを見送る事になった。
 ドラクエ3の盗賊は、戦闘終了後に敵からアイテムを盗む事がある。盗賊が複数
いると個別に成功判定が為されて誰か一人でも成功すると敵からアイテムを盗むので、四人
とも盗賊だったら盗みの成功率も約4倍になるってわけだ。
 盗賊はレイラ(女・セクシーギャル・元遊び人)、タウルス(男・電光石火)、ハルカ(女・お
嬢様・元僧侶)、ポポレイ(男・ラッキーマン・元魔術師)という編成。
 しかし転職時の神官のセリフ、ちょっと設定ミスっぽいね……。
 さて、彼ら四人のパーティにさっそくアイテム集めを頼む。何せ成功率は四倍、そのうえ
全員が範囲攻撃武器を持っていれば大抵の敵はすぐ蹴散らせる。そもそも彼らは「強い」モン
スターを倒すためのチームじゃない。能力値を上げる「種」を持っている敵の出る場所
でひたすらそれを集め続けるチームだ。ある程度の数が集まったらパーティを変更、アキ
ラにガンガン食わせていく(もちろん、上昇値が低かったらリセットも併用さ)。これを
毎日少しずつ繰り返していく。
 力は既に255なので要らない。
 素早さの種はデッドペッカー、賢さの種はおおくちばし、スタミナの種は笑い袋、ラック
の種はシャーマンから狙った。
 そしてついにアキラの能力値がALLカンストする日が来た。頑張ってくれた盗賊部
(最終的にレベルが30台、バラモスと戦えそう)に労いの言葉をかけ、僕等は再び
元のパーティを結成して懐かしのルビスの塔へ。再びはぐれメタル狩りに精を出す。
 そしてアキラがレベルアップ。知らない人が見たらバグにしか思えない超成長がここ
に……! MPが4倍近くになるっておかしいにも程があるけど、これは全くの合法。ついで
持ってた命の木の実も全部食わせておいた。HPが600超えたね。
 どんな武闘家よりも豪腕、どんな盗賊よりも高速、どんな戦士
よりもタフでどんな魔術師よりも賢くどんなイカサマ師よりも幸
運なバカキャラが完成。レベルも予定通り60まで上げたし、後は裏ボスを倒すだ
けだ。

ちょっとだけ番外コラム
【メスロン】
 逆に頭悪そうな最強キャラになったアキラだけど、これはドラクエ全体で考えたらどの程度の強さなのかな? それをちょっと考察してみた。対象はナンバリングされているシリーズ本流、1〜8までの主人公達だ。結論から言えば、ちょっと残念な話になるんだけどね。
 前提条件として、1:到達可能な極限の個人戦闘力、2:それが果た
せる速度の2点を考慮。もちろん1が2より優先でね。
 ただし1を考慮するときに、装備している品以外の道具の持ち込みはなしとさせても
らうよ。あと、召喚魔法や魔物、馬車や酒場にいるメンバーを戦闘中に呼び出す
のもなしとした。あくまで個人の戦闘力だけを比較という事で。装備はいわゆる「勇者専用
装備」と言われる物で考えたつもりだ。
 一方、2の考慮にはバグとチート以外は何でもありだ。
 そうすると以下のような序列になると思う。

7主人公6主人公8主人公
3主人公4主人公5主人公
1主人公2主人公

 7主人公は能力上限が999、覚えられる特技の数と質もバランスクラッシュど
ころじゃない。ただし強力な特技は細分化された職業にバラけているため、極限の強さにな
るためには途方もない時間が必要。最強だけど道は遠い……。
 6主人公は能力値上限が500という事以外はほぼ7主人公と同じ。7に比べて
職業の細分化が為されていないので、極めるのはこっちの方が圧倒的に速い。
 8主人公は覚えられる特技が制限されたのが痛手かな。テンションシステムも「いて
つく波動」が使える6・7主人公には通用しないし、このシステムを前提にされて最強技
の威力が押さえ気味だしね。能力値は999にいけるけど、アイテムを盗めるメンバーが一
人しかいないのでカンストに伴う労力は7以上。
 3・4・5の主人公たちはほとんど差がない。全員、能力値上限は255。装備の質も
ほとんど誤差程度。特技もない頃だから使える技は呪文どまり。いっそ全員=で同位でも
いいくらいだ。3はギガデイン、4はギガソード、5はバギクロスが最強技だけど、どうせベホ
マで全回復するから消費の激しい技で勝負するわけにはいかない。
 とりあえず3がこの地位なのは、マホトーンが使えるので相手の回復を封じられる可
能性があるって事、盗賊4人に種集めさせてカンストがとても早いという2点を考慮した。逆に
いえばそれだけだね。
 4と5はもっと僅差だ。どっちもマホトーンが無いから殴って殴られて回復を繰り返すしか
ない。トルネコがアイテムを盗む事があるからカンストは4の方がちょっと早いか
もしれないなあ、ぐらいの差しかない。僕より詳しい人がとことん掘り下げれば簡単にひ
っくり返りそうな順位だよ。
 ここから能力値が255にも届かない二人になる。まぁシステムが古いとそれだけでハンデな
のは当然だ。とりあえず1主人公が回復も間接攻撃呪文もあるってだけで2主人公
よりちょっと上かな。

 装備を相手ごとにカスタマイズするとかで順位も変動しそうだけど、まぁ大体こんなもんじゃな
いかな。アキラも5ぐらいまでなら通用しそうだね。まぁ5は仲間モンスターが主人公以上に強
かったりするんだけど。

【アキラ】
 データが吹っ飛ぶ前にやるべき事を済ませておくか……。少々時間をかけ過ぎたが、これをもって俺の戦いの幕引きとしたい。
 残るターゲットは3つ。ここからが真の最終決戦だと言えよう。
 バトル1:神竜
 ルーラで城まで辿り着き、最短距離で裏ボスの待つ祭壇へ。道中の敵は低消費の呪文と範
囲攻撃武器で散らし、今こそ竜神に挑む!
 ほぼ最高値の攻撃力・守備力・素早さ、群を抜くHP。強力な全体攻撃・範囲打撃に防御無視
打撃・耐性無視の強制睡眠、これら専用技に加えて補助魔法も凍てつく波動で無効化してくる
という「とりあえず最強にしました」というボスキャラだ。しかも倒すのに時間をかけす
ぎると報酬が無いというナメた仕様になっている。
 対するこちらの布陣――
俺:全弾ギガデイン
メスロン:メラゾーマかベホマラー。強制睡眠を食らった奴がいたらザメハ
カズ:メラゾーマかベホマラー。強制睡眠を食らった奴がいたらザメハ
マーリン:基本メラゾーマ。どうしてもというピンチには賢者の石
 なんて事はない、単なる力押しである。製作者の最後の良心だろう、神竜にはダメー
ジ魔法への耐性が無い。力255+攻撃力100オーバーの武器よりもメラゾーマの方が
効くのだ。バイキルトで逆転はするが、いつ消されるかもわからんので今回は頼らない。
 この戦法ならば凍てつく波動は全く意味が無いので、やってもらえればこっちは得をする。あ
とは強制睡眠の頻度だけが問題となる。

 そして遂に戦闘開始! 炎や牙の洗礼を常時回復で耐え凌ぎ、天の雷と地獄の業火で猛反
撃を叩き込む。力と力の大激突、知性皆無の侠立ち対決。そして挙がるは巨大な竜の苦痛の
咆哮。
 結果、最初の挑戦は15ターンで自軍の勝利となった。何度か強制睡眠を食らって
立ち直しに手間取ったのでまぁこんなもんだろう。とりあえず叶えてくれる願いの中から「親父
を生き返らせる」を選択。久しぶりに実家に帰ると、死んだ筈の親父がテーブルについて寛
いでいた。どこかへ旅立つ気はもう無いらしい。まぁまた出て行かれたらおかんにブチ切れら
れても文句は言えんだろうが。
 とりあえずもう2回挑み、すごろく場の新設と秘蔵のエロ本を貰っておく。エロ本を選んだ
時のファンファーレは神竜が吹いているのか? まぁ別にかまわんが。
バトル2:闇ゾーマ
 親父が「お前ならもうゾーマでもへっちゃらだろ」とか言うのでもう一回行く事にした。ただし
の玉は袋に入れたままで、だ。
 通称闇ゾーマ……呪文耐性がほぼ全てに完全、攻撃力と自動回復値が最高。よってもし戦
わせた場合、なんと裏ボスの神竜に勝ってしまうという。
 さて、これに挑む場合のネックは、俺のパーティが呪文型なので有効打が少ない
いう事だ。しかしまぁこれもやり方の問題。
 まず賢者の石はカズとマーリンに持たせ、回復は万全にしておく。ダメージが軽微でもマーリ
ンはひたすら賢者の石だ。俺は破壊の鉄球でひたすら殴る。メスロンはグリンガムの鞭での打
撃とバイキルトor回復を、カズはバイキルトと回復を使い分ける。凍てつく波動のタイミン
グ次第でバイキルトが意味をなさないが、自動回復を超えるダメージを与え続けるため
には多少無駄なターンが出るのも仕方ない。
 何ターンかかったのか忘れるぐらいの長期戦……だが俺の振り回すハンマーが奴の頭を叩
き割り、遂に魔王の断末魔が悪の居城に木霊した。HPやMPよりもプレイヤーの根気が
消耗される激戦であった。
バトル3:ゾーマとタイマン
 能力真カンスト(HPとMPが999)の状態で、装備を上手く使い分ければ勇者単独での闇
ゾーマ撃破が可能だという(どこかに動画がアップされた事もあったらしい)。
 ならば俺でも光の玉を使った後のゾーマなら倒せるのでは? そう思ったので試す
事にした。
 まず一人でゾーマの城に入る。破壊の鉄球を振り回せば意外と簡単にザコは散る。経験値
が4倍入手できるので、必要ないのにレベルが上がってしまった。もう能力値は上がらん
いうのにな……。
 そして挑む中ボス3連戦。キングヒドラはもうただのザコだ。隼の剣で微塵切りにする。
 バラモスブロスは固い上にバイキルトなしなので面倒な相手だ。よって草薙の剣のルカナン
効果で装甲を剥ぎ、あとは隼の剣で滅多刺し。穴だらけにして転がしておいた。
 バラモスゾンビは敵の攻撃力と打撃しかできない事を逆手にとり、刃の鎧を装備して挑
む。敵へのダメージの半分ぐらいは鎧の反射ダメージによる物だ。ベホマで結構なMPを使っ
てしまったが安定して勝利。
 そしてゾーマ戦。まずは祈りの指輪をありったけ使いMP完全回復。光の玉でバリアを剥いだ
後は普通に戦うだけだが、この戦いでも刃の鎧での反射ダメージを狙う事にした。吹
雪やマヒャドが軽減できないが、ここら辺はまぁ博打だ。
 そして最後は一刀両断! 何度目かになるゾーマの捨て台詞を鼻で笑い、俺は地に沈む城
を後にする。ラダトームに凱旋すれば、一風変わった王の労いの言葉が待ってい
た。
 無論、俺が最後に姿を消す事は変わらんがな。

 こうして俺の長かった戦いは本当に幕を閉じた。
 だがドラクエシリーズは今も発売され続けている。
 一つの戦いは終わろうと、冒険が終る事は無いのだ。

Good bye。そしてNEVER END。

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