201〜300

235
 もし状況記録値Uが31以上ならこの家には血糊と肉片が散乱している。こんな部屋に美
由を入れるわけにもいかないので3へ戻れ。
 そうでなければ家の中から悲鳴が聞こえる。怯える美由に玄関口へ残るよう言って、耕治は
家の中へ飛び込んだ。霧の中に見覚えのある男が二人。壁に背をつけて震えているのはガラ
シャツの男。それを追い詰めているのは徹也だ! その周囲には化物が溶けてできた水溜り
が二つ。徹也は耕治が乱入したのを見て赤い瞳を向けた。
「耕治か。お前にゃ今から俺がやる事を見せたく無いんだが……爺ちゃんの仇を前にして、生
かしておくつもりも無いんだよな」
「待てや! 俺を殺したら、上の情報は聞けないんだぞ!?」
 悲鳴のような声をあげて男が訴えた。だが徹也は黙って男を睨みつける。瞳の輝きが一瞬
増した。それからおもむろに右手を上げて男の方に向ける。
「今教えてもらったぜ、木庭深男さんよ。アンタの上とやらの事も、アンタが知っている限りは
な。それじゃあ……死ね」
「待て徹也!」
 耕治は徹也の肩を掴んで止めようとした……が、それに構わず光の軌跡が渦巻く。悲鳴と血
飛沫が部屋に散った。287へ進め。

245
 もし状況記録値Uが31以上ならこの家には血糊と肉片が散乱している。こんな部屋に美
由を入れるわけにもいかないので3へ戻れ。
 そうでなければ耕治は戸が開けっぱなしである事に気づく。中からは……化物の気配と血の
臭いが。耕治は美由を玄関の外に残し、そっと家の中を窺う。
 ここにも霧が漂っているが、耕治には部屋の中がはっきりと見えた。化物が溶けて崩れた水
溜りが二つ。そして――血の海の中、人間の体が転がっている。いくつもの部位に別れて…
…。胴体だった部分に絡み付いているシャツの切れ端を見るに、それはガラシャツの男だ。
 耕治は柄を握る手を前に突き出した。水溜りから淡い燐光が僅かながら立ち昇り、柄へと吸
い込まれてゆく。生神力を4増やすこと。ここに残っているエネルギーはこれだけだ。
○状況記録値Mを10増やす。
 耕治は戸を閉めて美由へと振り向いた。
「ここは駄目だ。別の場所に行こう」
 弟の有無を言わせぬ視線に、美由は戸惑いながらも頷いた。3へ戻れ。

257
「姉ちゃん、そろそろ出勤する頃だよね? 後は僕が話をしておくよ」
 耕治がそう申し出ると美由はちょっと驚いたような顔をした。だがすぐに首を横にふる。
「ううん、もう終わるから別にいいわよ。……すいませんね村釜さん、さっき話したとおり、父さ
んの方に話をつけてくださいな。住所はお教えしますから」
 そう言って自分のバッグから筆記用具を取り出し、メモ帳を千切ってさっさと父の住所を書い
てしまう。村釜は困った顔で待ったをかけようとした。
「いや、なんなら親御さんと電話しながら今決めてくださった方が、私としましても……」
「書きました! はい、ここです。じゃあ父と話をつけて来て下さい。その時には快くお譲りしま
すので。ではまたどうぞ」
 そうまくし立てて、美由はメモ帳の切れ端を手渡した。流石に怯んだ村釜に、美由は笑顔を
作ってきっぱりと告げる。
「またどうぞ」
「はい……失礼しました」
 ため息まじりにそう言って村釜は立ち上がった。彼が一礼して家を出て行くのを見送ってか
ら、美由も立ち上がって耕治へと振り向く。
「なぁに耕治、姉ちゃんのために気を利かせてくれたんだ? ありがとうね」
 そう言って嬉しそうに耕治の背中をぽんぽんと叩いた。耕治が背を追い抜いていなければ頭
を撫でていたに違いない。
「でも姉ちゃん、今日は非番なんだ。お休みなのよ、ゴメンね。でもせっかくだからおやつでも作
ってあげよう! 嬉しいでしょ?」
「え? ええっと……」
 口篭る耕治。キッチンの方に目をやれば、買ってきたばかりの食材がスーパーの袋に入って
置かれている。美由が外に出る時の格好をしていたのは、出かけるのではなく帰ってきたから
だったのだ。美由はエプロンを引っ張り出してキッチンへと向かった。
 このまま家にいるつもりなら282へ進め。会社の下見に行こうと思うなら422へ進め。

267
 野々宮家は明りが灯っているものの静まり返っている。呼び鈴を鳴らそうと耕治は玄関に近
づいた。
 状況記録値Mを確認せよ。その値が10なら302へ、20以上なら312へ進め。
 それにあてはまらなければ、玄関の前まで来た途端、家の中から悲鳴と助けを呼ぶ声が聞
こえる。戸を突き飛ばすように開けて耕治は中に飛び込んだ。霧に包まれた廊下を走りぬける
と、居間で身を寄せ合っている野々宮一家が目に入る。中年のおじさんとおばさん、そして中
学生になる和子が、人間の上半身程の肉団子に襲われていた。肉団子が歯の無い口を開け
て床を跳ね回り、耕治へと跳びかかって来る。
肉団子(三匹)  戦闘力7  攻撃力2  生命力3
 逃げるなら家を飛び出して3へ戻れ。戦って勝てば171へ、負ければ4進む。

282
 家宝の箱を神棚へ戻し、耕治はちゃぶ台に座って待つ事にした。キッチンでは美由が鼻唄混
じりでコンロに火を付けている。キッチンといっても狭い古長屋の事、居間の片隅に流しとコン
ロがあるだけだ。
 美由は家事全般をそつなくこなす。両親が家によりつかないため、必要に迫られて覚えたの
だ。耕治もしょっちゅう手伝っていたが、何をやらせても美由の方が上手である。生来の器用さ
が違うのだろうが、美由への甘えが自分にあるからだろうという事も耕治にはわかっていた。
「どうしたの耕治、テレビもつけないでさ。姉ちゃんに見惚れてたか? おしりばっか見てたらお
仕置きだぞ?」
 茶化しながら、美由ができたてのタコ焼きをちゃぶ台に持ってきた。その言葉で耕治は我に
帰る。
「別に……ただぼうっとしてただけだよ。いただきます」
 そう返事をして耕治はタコ焼きに爪楊枝を刺した。耕治の素っ気無い反応に、美由はつまら
なさそうにため息混じりの頬杖をついた。それを見ると耕治はなんなとく悪い事をした気になっ
てくる。
「いつもの事だけど、姉ちゃんが作った物は美味いね。プロだよこれは」
 気を利かせて言った事だがお世辞ではない。安納家にはおやつに回す金など無いので、昔
から美由の手作りが常である。そしてその腕前は――少なくとも耕治の舌には――いつもほ
ぼ満点だった。耕治の言葉で、美由の表情は一変して満面の笑顔になった。ふふふ、と笑い
声が漏れる。
「いつもの事だけど耕治は素直だね。いい子、いい子」
 すっと手が伸びて耕治の頭を撫でる。まるで子ども扱いだが、美由は自分を耕治の保護者だ
と思っているし、耕治にとっても美由は親代わりだった。
○状況記録値Dを10増やす。
 だが耕治は最近思う。性格も容姿も決して悪くない美由が二二を過ぎても浮いた話一つ無い
のは、自分がいるせいではないのかと。2へ進め。

287
 斬られた化物が淡い燐光を放ちながら溶けてゆく。生神力を8増やすこと。そのぼんやり
した輝きの中、徹也は耕治の手を振り解いた。
「あの男、仲間……というより上で命令してる奴らがいるらしい。そのうちの一人がもうじきここ
に来るとよ。耕治、お前は姉ちゃんを連れてどこかへ隠れてな」
 そう言うと徹也は背を向ける。
「待って、徹也!」
 強い口調で呼び止める耕冶。徹也はゆっくりと振り返る。瞳を染める憎悪の色は、邪魔をす
るなら耕冶へも敵意を向けるだろう。そう感じつつも耕冶は怯まなかった。
「一人じゃ危ない。今は僕たちと一緒に来てくれ。爺ちゃんの仇についてはその後で考えよう。
僕もできるだけの事はする。相手を殺す所までは、したくないしさせたくないけれど……」
「そうかい。けど一緒には行けねぇな。俺は連中が泣いて謝っても赦すつもりはないし『殺させ
たくない』ならお互い様だ」
 そう言う徹也の口調は刺々しかったが、最後の方はわずかにいつも通りへと戻りかけてい
た。
○状況記録値Mを10増やす。
○状況記録値Uを40増やす。
 徹也は空き家を飛び出した。慌てて耕治も後を追うが、玄関を出た所で美由の姿を目にして
足を止めた。姉を放っておく事はできない。
「耕治、徹也が走っていったけど……どうしたの?」
「……徹也には、ちょっと用事があるんだ。とにかく、ここは良くない。別の場所へ行こう」
不安げに尋ねる美由に耕治はそう答えた。ズタズタになった骸の転がる家へ姉を入れたくは
無い。3へ戻れ。

299
 ドルアーガの顔がぱっくりと左右に割れた。端整なマスクが、笑みをはりつけたまま、内側か
ら突き破られるように割れたのだ。九本のヘビのような腕が現れた。暗緑色の肌、四本の足…
…。
「わたしに勝てるとでも思っているのか! 愚か者めが!」
 ドルアーガの本体が叫ぶと、大理石の壁がビリビリと震える。だが驚いている暇は無い。ギ
ルガメスは剣を握り斬りかかろうとした。
 が、なんとした事か。急にドルアーガが吐血して膝をついたではないか。ギルは慌てて駆け寄
り上体を抱き起こすが、ドルアーガには既に死相が浮き出ている。
「わたしもここまでか……。長年、魔法イッパツで倒されて心臓に穴が開きすぎた。フッ、医者
には止められていたのだが、な……」
「そんな体で……馬鹿だよ、お前は!」
 涙まじりのギルの声さえ、もうドルアーガには届いていないようだ。
「アンサロム、元気でやっているか……? 死の巻物を手に入れられたらお前も即死ほぼ確定
だったな。ザゴールよ、ザカーズよ。また一撃必殺アイテムを手に入れられてしまったのか。お
お、ミノスもいるのか。外付けミサイルと音波砲のコンボさえなければ、お前とて……。わたし
も、すぐにそっちへ……」
「おい! しっかりしろ! おいィ?」
 その最期の呼びかけに、ドルアーガが応える事はなかった……。14へ進め。

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